やまなしりょうへい

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クルマではなく、蹄音を響かせる馬車、

手紙を読む明かりは、電灯ではなくランプの揺れる炎、 

 そんな美しいようすが想い浮かぶ音楽。

bookglasseslamps

♬ 8月の校庭/アルバム「イオニアの踊り」より

青山 忠/マンドリン、山梨 鐐平/ギター

 その歌声を耳にした時、感情が刺激され、忘れ去った記憶がよみがえる。

あの日確かに見て心にとどめたものの、移ろう現実の中でなくした風景。

 風景なら、まだいい。心の放物線がかつて交わった大切な人が浮かんだ時には、

熱い恋や悔いても悔いたりない思いがわきあがり、いたたまれなくなる。 

映画のワンシーンのような歌詞は、現実よりもリアルな絵空事があることを伝える。

叙情性に彩られた旋律は、聴き手の感情を揺さぶり、音楽の力を教えてくれる。

似たような曲は、今の音楽界を見まわしても、どこにもない。

ある意味、わがままに自分の世界を押しとおす。

聴き手におもねる音楽家が多いなか、そんな発想は浮かびさえしない。

孤高という言葉がこれほど似合う音楽家もいない。

繊細で優美だが、ある面では恐ろしくりりしく、そして誠実。

すべては中途半端で突き詰めることが美徳ではなくなった21世紀の日本。

ここまで自分の歌世界を貫く音楽家に出会えたことを喜びたい。

大野 宏